母が退院して3ヶ月が経った
母が退院して3ヶ月が経った。介護が始まって3ヶ月。あいかわらず、右手右脚は動かない車椅子生活。退院して帰宅した当初は自分の動かない体をもてあましつらそうだった。
病院では車椅子で自由に動いていたようだが、家では思うようには動けない。
バリアフリーとはいえ不自由になった体には不都合なことが多くイライラすることが多かった。
母も、母を支える家族も辛い期間だった。
テレビも観ない、ラジオも聞かない。ただただイライラしていた。
そんな中、父が救急車で運ばれた。
母は一緒に逝きたいと言った。
力を無くした母はボーッとしていることが多くなり、同じことを繰り返し繰り返し聞いてくるようになった。
私に嘆いている余裕はなかった。
父が一命をとりとめ、人工呼吸器の管が外れたことを知った時、母の意識ははっきりした。
一度はあきらめた父の命がつながり、車椅子に座った父と対面した時、母は少し元気を取り戻したようだった。
父がリハビリのため転院した日、家に帰った母は早速父の洋服をタンスから出して揃えていた。
父が退院した時に着る洋服を届けると言って。
1ヶ月先か、2ヶ月先か、まだ入院したばかりで退院日なんてわからないのに。
暫くして、急にラジオを聞きたいと言った。
外出を嫌がっていたのに嫌がらなくなった。
庭にもよく出るようになった。
母にとって父の存在は元気の源なのか。
そして家での生活にもやっと慣れて来たのか。
車椅子ではなく、家の中にを杖で歩けるようになりたいと言った。
3ヶ月目、初めての前向きな言葉だった。